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塗師屋の女将えつこ

fufuetsuko.exblog.jp

《食洗機対応の輪島塗》を見て思ったこと

昨夕のTVニュースで 食洗機対応の輪島塗を見ました。

ニュースを見るまでは 『あらっ そんな新しい漆も開発したの?』と思ってたんですがー
(近年 紫外線に強い漆とかが開発されてます)  

放映をみてると 素地は欅を使い 国産漆を使った従来通りの下地や 中塗 上塗で 食洗機5000回使用した汁椀でした。
(1日3回使用して 5年間の使用)
新品のお椀に比べると 映像では 黒漆が 漆黒から少し羊羹色に変化してたように見受けられました。

昨年我が家で 食洗機を使用した汁椀の塗り替えをお願いされた時 使い方の参考資料用に欲しかったので お客様にお願いして 預った一客を 新品のお椀と取替えさせてもらいました。

(左)新品の汁椀  (右)塗り替えでお預りした汁椀
《食洗機対応の輪島塗》を見て思ったこと_c0094218_11191623.jpg
最初の納品は H8年の5月。
お客様にお訊ねすると 買われてすぐに使いはじめられたようです。

塗り替えをお願いされたのが H21年の春。
となると 約12年間も食洗機を使われてたんですねー
黒漆も 朱漆も可哀そうなくらいに 艶が全く失せてしまってるでしょう。
放映されてたお椀も12年もすると きっと同じ状態になるのじゃないかしら?

業務用に使う漆器はともかく 家庭での漆器は 面倒でも 手で洗ったら すぐに布拭きするのが 一番よいお手入れ方法じゃないかしら?

漆は天然素材‥
輪島塗は 仕上がりまでを機械に頼るのではなくて すべて 人の手から作り出されます。

漆器の表面は人間の肌と同じだと思うんです。
濡れた肌を 人工的にドライヤーで乾かしてると 肌は荒れてくるでしょう!(食器乾燥機)
強い洗剤や熱い水流を肌にあててると 肌はガサガサになってしまう‥!(食洗機)

布拭きしながら 手のぬくもりを器に伝えてやると しだいに底艶がでて輝いてきますよ!

時間に追われた忙しい日々‥ 
そんな悠長な時間なんて取れないわーって声が聞こえてきそ~う~

ほんのわずかの時間を 漆器への優しさに使ってあげるなら‥ 

ものを大切にする習慣や 思いやりの気持が育ち 目や耳を覆いたくなる事件が少しは減るのではないかしらー

便利さだけに妥協せず 正しいお手入れ方法をお伝えするのも 塗師屋のお仕事ではないのかしらー?と ふっと思った 塗師屋の女将でした。
by fugeshietsuko | 2010-08-20 11:51 | 輪島塗と塗師屋のこと
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